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BOGGYのイタリア料理と山と野草
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【2008/09/08 03:24】
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鰊蕎麦
昭和42年の夏、メーカー派遣のセールス・ヘルパーとして京都の四条通河原町にある高島屋のステレオ売場に一ヶ月ほど出張させられていた。
このセールス・ヘルパーというのは、メーカーの製造部門などから、各地の電気製品の売り場に派遣され、店頭の自社製品の売り上げを確保する販売促進の方法の一つであった。いかにも売り場の店員になりすまし、それとなく自社の製品を売りつけるのだから、えげつのない売り方と言われても仕方のない販促手段であった。
夏の京都は暑く、押し込められた安旅館には当時冷房なとどいうシャレた設備などはなく、毎晩寝苦しい思いをした。
売り場では、この夏大ヒットしたブルー・コメッツの「ブルーシャトー」と、同じブル・コメの曲であった「真っ赤な太陽」を美空ひばりが歌ってこれまたヒットしたこの2曲を交互に大音量でのステレオで流していて、耳にタコが出来るほど聞かされた。
昼食時になると煩い売り場から開放され、川原町周辺に食事に出るのが楽しみだった。
高島屋を出て、鴨川にかかる四条大橋の向かいに南座があって、その並びに松葉という蕎麦屋があった。
ここの店の鰊蕎麦が美味しいと売り場の主任に教えて貰って試してみて、初めて体験する味の蕎麦がすっかり気に入って、この後何度か通うことになった。
鰊蕎麦はこの店の明治時代の当主の発明だということを聞いた。
東京に帰ってからも、東京の蕎麦屋でもメニューに鰊蕎麦があれば注文するようになって、この蕎麦のまかない場の符牒が「京都」だと言うことも分かった。
若い頃の知ったかぶりで、蕎麦屋に入り「京都一つ」なとど注文して悦に入っていた。
岐阜に越して来てからすぐに、久しぶりに京都に行くことになって、この鰊蕎麦を思い出し、わざわざ時間を調整して松葉を訪ね、三十数年ぶりの本家の鰊蕎麦を楽しむことにした。
昔は平屋であった松葉は今では三階建てになっていて、店も大きくなり、京都駅にも支店などを出す盛況ぶりになっていた。
鰊の捧煮(鰊蕎麦の鰊)を、店だけで使うだけでなく広く外販もしているようで、工場で大量に生産していることが分かった。
当時は店の奥で、店で使う分だけ作っていたのだったが、高度成長の時代の波にうまく乗って拡大していた。
折角の三十数年ぶりの鰊蕎麦の出会いとの感激もなんとなく薄くなって、期待を殺がれたような気分で店を後にした。
以来、イタリア料理の合間に、自分で鰊蕎麦を作ることを思い立ち、身欠鰊を買ってきて色々煮方を工夫したが、カチカチに硬くなった身欠鰊は、松葉の鰊のようには柔らかくならなかった。
それでも味は不味くなかったので、しばらくは妥協の鰊蕎麦で我慢していたが到底人に食べて貰うほどのものではなかった。
(身欠き鰊で作った初期のもの)
ある日、普段行かないスーパーの魚売り場に、身欠鰊ではなく、ソフト鰊という名前の、半干しの鰊を発見した。生と身欠鰊の中間のような、厚みのある身はまだ柔らかく、尻尾の部分などはちよっと硬くなっていて、これならうまく煮ることが出来るのでは、と期待して大量に買い占めて来た。
キャッシャーのパートのおばさんは、鰊だけ篭に一杯買う変なオジサンという顔をしていた。
以来何度も挫折する挑戦が続いたが、鰊臭さの元は鰊の脂肪にあるのでは?というヒントを得てから、一度大量の水と鰊を圧力鍋で三十分ほどしっかり炊いて、湯がいた水を全部捨てて、鰊だけを取り出し、今度は普通の鍋で、みりんと醤油とソフトな甘みの黒砂糖を使って、ゆっくり煮込み直すという方法で、本家の松葉にヒケを取らない鰊の捧煮が出来るようになった。
これなら人に食べて貰っても良いかもと自信をもてるほどになって、イタリア料理を期待して来る人に突然この蕎麦を出したりしたけれど、結構気に入って貰うことが出来るようになった。
夏には、この鰊で冷たい蕎麦にもするけれど、しっかり臭みの元を取ってしまっているので、冷たい蕎麦でも生臭い感じは全くなく、好きな鰊蕎麦が夏でも楽しめるので大変気に入っている。
本家松葉の「冷しにしんそば」は、とろろと卵の黄身がかかっているが、私は湯通しをしたなめこを冷やして、大根おろしと合わせてかけるのが気に入っている。
【2007/10/30 11:27】
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