BOGGYのイタリア料理と山と野草

イタリアファンのBOGGYが作って食べるイタメシのプログです。 登山、ピクニックのアウトドア・イタリアンはいかがでしょう。 革工芸も始めました。

落語「長屋の晩餐会」

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 みなさん落語はお好きでしょうか。私は子供の頃から落語は聞きましたね。
日本の落語は、他の国には例のない、日本独自の庶民文化だと思いますね。
それも、時代が変わり、国の構造や国民の生活が大きく変わってしまっても、まだ、続けて庶民に愛されるというのも素晴らしいと思います。
一人の落語ファンとして、一度はこの落語を自分で作ってみたいと思っていましたが、ある日落語のヒントが閃いて、一気に作ってしまいました。私が初めて作った落語です。
読んでやってくださいませ。2005年6月



落語「長屋の晩餐会」

江戸も500年になりますてぇーと、文明開化もすっかり進みまして、なにやらハイカラなものが流行るようですなぁ。
長屋の家主の馬鹿旦那、いえ若旦那も最近なにやらスルメ・・じゃない・・グルメ料理なんてーもんに凝ってるとかで、長屋の女房たちも、若旦那に捕まっては、なにやら若旦那の作ったヘンテコなものを無理矢理食べさせられて、近頃では若旦那の姿がチラとでも見えた日にゃ、クモの子散らすように、井戸端から逃げてしまうようで、若旦那もこの頃はそれを察してか、なんぞ考えてるようで、長屋の店子も若旦那が次には何を言い出すかと、気になって落ち着つきません。

(八)「おーい、熊ぁいるかい?」
(熊)「なんでぇ、八つぁんじゃねーか、朝っぱらから八つぁんが顔 だすなんざ、イヤーなヨカン、倍にしてヤカンがするネェ」
(八)「熊ぁ、シャレてるバヤイじゃねぇヨ。てぇへん、一大事」
(熊)「何アワ、ヒエ食ってんだよ、八つぁん、まぁ、あがんな よ、・・・おーい、おっかあ、出てこいよ、若旦那じゃねぇよ、八つぁんだよ、・・・おっかあもよっぽど懲りたんだねぇ・・何食わされたんだか・・あわてて押し入れなんぞ隠れちまって・・」
(熊)「で、八つぁんよ、いってぇ何が一大事なんで?」
(八)「それがサ、朝方親方んとこ顔ださなきゃなんねぇんで、大家の家 の前通り抜けようとしたらね、運わるく若旦那が庭で水ヤリしてるじゃねーか、目が合っちまってよ、しらんぷりも出来ねぇんで、お早いこってとかなんとか言ったら、若旦那がいいとこに来たって、ちょいと話しがって、呼ばれちまった」
(熊)「八つぁん、そりゃーイケネェ、あっちは鬼門だ、おいらだって、 遠回りでも、裏から抜けてくんだぜぃ」
(八)「おっかあが早く行けって急かすもんで、つい通っちまったのが運 の尽き、寒の月」
(熊)「オイオイ、シャレてるバヤイじゃねぇって言ったの誰でぇ、で、 若旦那の話ってぇなんだい? ・・オメエの溜まった店賃の催促でもされたんだロ」
(八)「それがサ、その方がまだマシってもんヨ、そーじゃねぇんで、 一大事」
(熊)「家主が店賃の催促を忘れるようじゃ、猫がまたたびまたいで通る ようなもんだ。そりゃー一大事だ」
(熊)「おっと、前通るの幇間の亀じゃねーかい、おーい亀さん、ちょっ と寄りねぇ」
(亀)「おや、熊さん、あらま八さんもおいででげすな、おはようさん で」
(熊)「亀さん、てぇへん、長屋の一大事って話のとこだよ」
(亀)「あらら、長屋が地上げで取り壊しにでもなりますか・・」
(熊)「そーじゃねぇんで、今八つぁんが、家主の若旦那から、なんか言 われてすっ飛んできたとこでぇ・・猫がままだびまたぐ話で・・・」
(八)「熊ぁ、猫じゃぁないよ・・」
(亀)「熊さん、八さん、ちと話がみえませんでげすな・・」
(八)「亀さん聞いてくんねぇ・・俺が今朝方若旦那と鉢合わせしてね、 今月、明日の講は、大家んちが当番じゃねーか、そんで、若旦那が講のついでに、バンサンカイってぇもんをやるんだとよ」
(熊)「なんでぇそのバンサンカイってぇーのは、婆さんを買ってどうする」
(八)「ちゃうちゃう、若旦那の豪勢な舶来料理を食う会をするんだとか」
(熊)「あいたぁ・・・若旦那ここんとこヤケにおとなしいんで、なんか考えてんじゃネーカと、おっかあと話してたとこだゼ・・・・やっぱりきたネ」
(八)「でサ、今回は、全員おっかあも連れて来いとのお達しでね・・・おれんとこのおっかあ、それ聞いてヒキツリ起こしやがった」
(熊)「オイおっかあ大丈夫か・・顔真っ青だぜぃ・・オイオイ、また押し入れに入りなおしてどおする」
(熊)「しかし、八つぁん、若旦那いったい何処から、バンサンカイなんぞという手ェ考えたんだい?」
(八)「それがサ、若旦那が通ってる銀座の活動写真屋で、最近見た、 えーっト、パピプペット・・じゃねぇ・・バビブベットのバンサンカイってぇ活動写真が・・・」
(亀)「バベットでげす、あたし若旦那に見に連れて行かれた・・」
(八)「バベでもバビでもいいや、若旦那これがすっかり気にいっちまって、それを長屋の皆の衆を集めてやるってんだヨ、なんでも料理一品ってぇもんじゃなくて、古小臼とかって、臼にでも盛って、何種類も食べさせられるのかもしんない・・・」
(亀)「フルコースでげす、いわば西洋の万貫全席でげすな・・」
(熊)「オイオイ、これまでは若旦那がちょいと一口ってぇからイヤイヤ食べて、そんでもメッポウ懲りたんだぜぃ・・それが一口じゃすまねぇってことになると・・こりゃーただじゃすまねぇゼ・・死人が出るかも・・・・ところで八つぁん、隣のご隠居は元気かい?」
(八)「熊ぁ、なんで急にご隠居の心配する・・・」
(熊)「いえネ、今日にでもご隠居がおっちんでくれりゃ、そのバンサンカイってぇもんもお流れになる・・」
(八)「オイオイ、熊ぁ、ご隠居殺しちまってどうするってんだヨ」
(熊)「ダメかぁ」
(八)「ダメかぁって、いいかげんにしなヨ」
(亀)「で、八さん、何の相談でけす?」
(八)「若旦那がネ、そのバンサンカイの材料を揃える手伝いをしろというんでサ・・・揃える材料の品書きと買うゼニまで渡されちまってネ・・・・で、築地の市までひとっ走り頼むってんでサ・・・明日の朝に届けてくれと・・・・・・でもね・・・ふふふ」
(熊)「八つぁん、この一大事になんでニタニタしてるんでぃ」
(八)「それよ、この材料を別のもんにして、うっかり間違えたとかなんとかすりゃぁ・・若旦那、料理が出来なくなるって寸法よ」
(熊)「エライッ!そりゃいいゼ、しかしなんだな、それぁ八つぁんの考えじゃねーな、おめぇにしちゃ出来すぎ、お春さんの差し金だロ」
(八)「ずぼし、物干し、梅干しで、・・このしなもんに見た目や名前はおんなじでも別のもんを揃えるのが相談」
(熊)「どれ、それ見せて見ろ・・・うむ、カタカナまじりだ、さっぱりわからねぇ・・・・亀さん、その活動写真見たってんだろ、こうなりゃ亀さんが頼りだぁね」
(亀)「へいへい、しかし、最近とんと舶来料理にはご無沙汰でして・・」
(熊)「最近ご無沙汰って、もしかして、亀さん舶来料理っての食ったことねぇんじゃねーかい?」
(亀)「まっ、早く言えばそんな所でして・・」
(八)「早くも遅くもあるかい、そりゃ見栄っぱりの言いまわしってんだヨ」
(亀)「エへへ、活動写真は見てまいりしたが、食べたわけではござんせん」
(熊)「食わなくたって、ものは見てんだろ」
(亀)「しかしなんでげすな・・この品書きと活動写真で見たもんが、どれがどれだかわかりません・・・・あ、一つだけ、このアオウミガメって、あれにも亀の料理がありましたな・・ありゃー気味ぃ悪くて覚えてましたなぁ」
(八)「亀が亀を気味悪がってどうする」
(熊)「オイオイ、八つぁん、シャレてる場合じゃネェよ、海亀? そんなもん食わされてたまるかってんだ」
(八)「亀さんが頼りってのに・・・なんか手ぇはねぇのかい亀さんよ」
(亀)「そーいわれても・・・・・・・おっと、これはアリかな・・へへへ」
(熊)「へへへって、もったいぶんねぇで早く言ってみなヨ」
(亀)「若旦那のお友達で、錦糸町の旦那がいますよねぇ・伴次とか言った」
(熊)「おぅいるいる、あのとんでもねぇ知ったかぶりの若旦那だろ?」
(八)「そーそー、腐った豆腐を、珍味じゃ、とか言って食った馬鹿旦那だよ」
(亀)「その若旦那に相談すれば、例の知ったかぶりで全部教えてもらえる」
(熊)「ちげぇねぇ・・知らないって、絶対言えねぇからねぃ・・あの若旦那」
(亀)「それで、八さんは、わちき一人じゃ心ぼそいんで、錦糸町の若旦那に相談したっていゃー、八さんにはお咎めなしって寸法ですねぇい」
(八)「それ頂きの、山のてっぺんだぁね、亀さん、あんたエライっ!」
(熊)「八つぁん、錦糸町まで、ひとっ走りしてこいや、長屋の一大事もこれでなんとかならぁね、万事(判次)めでたしってこれだーね」
(八)「熊ぁ、また、シャレてる」
(亀)「八さん、若旦那に聞くとき、絶対食いもんだと言っちゃいけませんヨ」
(八)「おう、がってん、いってくらぁ」

八さんが、錦糸町の若旦那の家にまいりました。

(判)「おやおや、神田の長屋の八さんではありませんか、こんな朝からどうしました?」
(八)「若旦那、おはようござい・・実は大家の若旦那に用を言いつかったんですがねぃ学のねぇわちきにはサッパリ分かりません、で、物知りの若旦那に相談をと・・」
(判)「そーかい、そーかい、よく来てくれたねぇ、それで何を聞きたいのかな?」
(八)「ここに品書きがありまして、エット、どうやら舶来モンばっかりのようで・・・」
(判)「なーに、舶来ものでも唐ものでも、私が知らないものはない、エッヘン」
(八)「へい、では最初に、アオウミガメってなんでござんしょねぃ」
(判)「フム、アオウミガメといゃーきまってますねぇ、海にいる亀じゃありませんか、ちなみに、青と赤がおりましてな・・・」
(八)「へい、そりゃーわちきも知ってはいますが、生きもんじゃないものでは・・いったい何になりますかねぃ」
(判)「フーム、そりゃー瓶のことだね、水瓶とかね」
(八)「ほほぅ、瓶ですか、なるほどねぃ・・で、アタマのアオウミという瓶はどんな瓶になりますかねぃ」
(判)「聞くまでもないでござんしょ、海のように青い色の瓶のことですよ」
(八)「なるほど、さいでしたか・・青瓶一つ・・・っと」
(八)「では、お次に ウズラってえもんはなんでござんしょ、鳥ならわちきも知ってますけどねぃ」
(判)「フム、ウズラね、これは、漢字で書くと渦という字と螺旋の螺の字になる。八さんも知ってる筈だがね、渦巻きをした形のもんで、何か心あたりはないかい?」
(八)「はてね、おらん家で渦巻きのもんがあるかと言えば・・・・
・・エヘヘ、あるある、蚊取り線香だねぇ・・」
(判)「そーそー、それのことだよ、学のある者は、それをウズラとい う」
(八)「そーでしたか、なるほどねぇ・・・・蚊取り線香ねっと」
(判)「まだ何かあるかい」
(八)「へい、こんどはトリフってありますねぃ、これはなんでござんしょ」
(判)「フム、トリフね、これは本来は舶来ものでね、漢字で書くと鳥と布と書いてトリフ、羽布団のことを言うのですな、なかなかお高いものですよ」
(八)「へい、そーいや若旦那も、これは高いものだと言ってましたね・・・・・羽の布団・・っと・・・若旦那、これで終わりでさ、おかげで助かりました。」
(判)「そーかい、そりゃーよかった、神田の若旦那に判次がよろしくと言っていたと言っておくれよ」

八さん、勇んで長屋に帰ります。
                             
(八)「お春、水くれぇ・・すっかり喉かわいちまったぜ」
(春)「あんたお帰り、さっきから、熊さんと亀さん、首長くして待ってたんだヨ」
(八)「そーかい、亀の首伸びるのは知ってるケド、熊ぁの首も伸びるとは知らなんだねぃ」
(熊)「なにぃ言ってんだい、で、首尾はどうだったんだよ」
(八)「もぅ、あの馬鹿旦那、可笑しくってサ、吹き出しそうになってこらえるのにえれぇ苦労をしたゼェ・・・・思い出しても可笑しい・・・ククククッ・・」
(熊)「八つぁん、一人でうけててどうする、で、しなもんは決まったのかい?」
(八)「ああ、これ見てみな」
(熊)「どれどれ、・・・・なんだあ、青い瓶、香取線香、羽布団?・・・
・・これじゃまるで判じ(判次)ものじゃねぇか」
(八)「ワハハッ、熊ぁまたぁシャレ言ってる」
(熊)「え、おれが何か言ったか?」
(八)「なんだ、自分で知らずに言うシャレもあんのか・熊ぁは・・」
(亀)「ほんと、わちきも負けそうなシャレだった・・」
(熊)「エヘヘ、これで若旦那の料理も万事(判次)窮すだぁ」
(八)「またぁ言ってやがる」

長屋の衆は手分けして、ものを手に入れ準備万端、次の朝になりました。

(八)「若旦那、おはようございます、もうしつけのもの持参いたしやした」
(若)「八さんご苦労さん、で、全部揃いましたかい?」
(八)「まあ、なんとか・・」
(若)「どれどれ、・・・・あれーなんだいこの青い瓶は、・・・それ に、これは蚊取り線香と羽布団・・アオウミガメとウズラとトリフはどうしたんだい?」
(八)「へい、その瓶がアオウミガメ、香取線香がウズラ、羽部布団がトリフだそうで、わちき一人じゃ心ぼそいんで、錦糸町の若旦那に相談して買ってめいりやした」
(若)「なに、これを買えって言ったのは錦糸町の判さんかい(晩餐会)?」

そろそろお次がよろしいようで・・・ (終わり)

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