BOGGYのイタリア料理と山と野草

イタリアファンのBOGGYが作って食べるイタメシのプログです。 登山、ピクニックのアウトドア・イタリアンはいかがでしょう。 革工芸も始めました。

セイコガニのパスタ

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11月になると、日本海のズワイ蟹が解禁され、翌年の3月まで、ズワイ蟹のシーズンになります。
岐阜県には海が無いので、岐阜県が親しみを持つ海の幸は太平洋側よりも、日本海の福井や石川、富山県のものになります。
極端な話、岐阜市内よりも、周囲を山に囲まれた飛騨地方の方が新鮮な海の魚貝を味わえるという不思議な現象さえ起こっています。
つまり日本海に距離的に近い飛騨地方は、北陸各地からの新鮮な魚介類に恵まれるという理由で、特に流通インフラが整備された現在はなおさらなのです。






私がまだ三十代半ばの頃、東京から岐阜に、月に一度仕事で通うようになった。
その中の一社の家族経営の会社は、福井県の出身だったので、冬を迎えると、待っていたようにズワイ蟹を福井の港で仕入れて来て、皆で食べるのが習慣でした。
私が特に気に入ったのは、形の小さいメスのズワイ蟹で、これはセイコ蟹と呼ばれ、当時は市場には出ずに、土地の人達の胃袋に収まっていた蟹でした。
このセイコ蟹は、子持ちの蟹で目一杯の卵を体の内外に抱えいてる。
小さいので食べるのは面倒なのだけれど、その濃厚な蟹の味に惚れ込んでしまった。
毎年この茹でたセイコ蟹を食べるのが楽しみでした。

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以来30年も経って、2001年に岐阜に越して来て、自分専用の台所を得てからは、好きなイタリア料理を気兼ねなく作れる環境になっていたので、このセイコガニを使ってのイタリア料理を考えて見ることになりました。

元々、イタリア料理にも、カニのパスタは有って、この時に使うカニはワタリガニです。
これをカラ付きのまま数等分に断ち切り、オリーブオイルで炒めて、カニの香りを出してから、別に取り出したカニ身と一緒にトマトソースに和える。
淡白なワタリガニなので、濃厚な味ではないが、カニの香りのする上品なパスタになる。東京に居た頃は、このイタリアン・レストランでこのワタリ蟹のパスタを食べていました。

岐阜に来て最初の年に、このセイコ蟹を使ってワタリ蟹のパスタと同じように作ってみました。
しかし、殻ごと料理をした蟹は、見かけは豪華に見えるけれど、パスタに絡まった殻が邪魔で食べにくいのです。
面倒だけれど、蟹の身と卵、ミソを全て取り出して、殻は使わないようにしました。

また濃いトマトの味に、繊細な蟹の味が負けてしまっているようにも感じたので、元々エビやカニが合うホワイトソースのパスタにして見たけれど、作りかけのカニのグラタンのようでこれも気に入らない。
考えた末に、トマトソースに生クリームを和えて、トマトの強さを消し、クリームの風味を加えたソースを作ってみたが、これが一番美味しく、カニに合うように思ったのです。
ソースの色がオレンジ色になったので、これを「セイコガニのオレンジソース」と名付けました。
当時のインターネットにはセイコガニを使ったパスタの画像、情報やレシピはまだ無かったので自分で工夫するしかなかったのでした。
結果、元祖セイコガニのパスタの誕生になったのでした。

岐阜に来て二年も経つと、私の趣味のイタリアンを食べる人達が徐々に増えて来て、そんなファンのために、当初は作った料理の写真をアルバムにして家に置いていたのです。
ファンの一人から、「これだとここに来ないと見れないので、インターネットに載せてくれれば嬉しいのに・・」、と言われたので、仕事で運用していたインターネット・サーバーに、2003年の5月に、私のホームページを作って、イタリア料理のページを作りました。

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ホームページ


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2003年の元祖セイコガニのパスタのページ


いかにもイタリアン・レストランのような、シャレで作ったホームページを見て、お宅の店に行きたいのだけど、店の住所が分からないと、メールが入ったりして、驚きました。
お店のページだったら、店の名前と案内の地図や電話番号は必須の情報で、それが無いのはお店ではないと分かる筈なのに、色々な人が居るものだと笑ってしまいました。

当時は、ホームページは簡単に開設できるものではなくて、一々HTMLというインターネット用のプログラム言語を使ってシコシコとページを作っていたのです。
現在のように、簡単に自分の情報を公開することが出来る「ブログ・サービス」が急速に普及を始めたのは2005、6年の頃からだったと思います。

先日なんの気なしに、"セイコガニのパスタ"で画像を検索してみたら、続々と画像が出てきたので驚いてしまいました。
その検索ページの半ば過ぎに、2007年の11月に私の新設のブログで「カニソースのトースト」という記事を載せ、ホームページからセイコガニのパスタの写真を転載したものが検索で出てきたのでした。

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2007年にホームページからブログに転載した「セイコガニのパスタ」

この頃はトマトソースが多く、生クリームが少なかったので、色は濃く、ソースをパスタに和えてから盛りつけ、カニの甲羅を飾っていました。

検索されたセイコガニのパスタの画像には、幾つか出来上がったパスタの上に、カニの甲羅が鎮座しているものもあって、元祖の私はちょっとダサイなぁと、もう止めてしまったのに、それと同じ盛り付けがあったので、つい笑ってしまいました。

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写真は2008年頃、カニの甲羅を載せる盛り付けは止めて、カニのソースを和えずに、茹でたパスタの上に載せるようにしました。

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写真は2010年頃。現在のレシピに近く、トマトソースの割合が生クリームと半々になって、ソースの色が淡くなりました。

もう10年近くも作り続けていたこの「セイコガニのパスタ」は、この十年で、最初の作り方と随分変わってきたのが分かります。

年々このパスタを待ち侘びる人達が増えて、今では数回のグループにして、カニパスタのパーティを開くことになっています。
こんな人気のセイコガニのパスタのレシピを一度も書いたことが無かったので、現在の作り方で一度書いてみることにしました。

セイコガニは山陰地方の呼び方の一つで、他にはメスガニ、セコガニ、コガニ(小がに)と呼び、丹後ではコッペガニ、北陸ではコウバコガニ(子箱がに、香箱がに)と呼ばれています。
高額なオスに比較すれば型の小さいメスは安く、今は堂々と市場に出回ることになりました。
セイコガニの美味しさが知れ渡って、人気になったのでしょう。

セイコガニにはソトゴとウチコと呼ぶ卵を持っていて、この卵がカニの味と独特の香りのもとになっているのです。
雌ガニの漁期は11月の6日から翌年1月の10日まで、資源管理の意味から漁期もオスよりずっと短いのです。

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味や香りなどの品質の面では、日本近海のもので日本の港に揚がったものが一番でしょう。
私は毎年、朝、港に揚がり、セリで落とされたものを即座に茹でて、その日に出荷するという信頼できるカニの問屋さんから手に入れています。
この問屋さんとも長いお付き合いになっています。

各港に揚がったカニにはそれぞれの出荷地を示す小さな「タグ」が付けられているのです。
今ではスーパーの店頭にも並ぶようになっているけれど、タグの付いてないものは、ほとんどがロシアからの輸入物なのでしょう。
このカニの移動経路と移動時間を考えれば鮮度には格段の差があると思います。
安いとしても折角の料理にこれを使う気にはなりません。

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港に揚がってから一日で届いたセイコカニ
 

○まずカニの捌き方から。
私がカニを捌く時に使う道具は、包丁、料理ハサミ、カニのスプーンの三つです。

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まず、カニの脚を根本から包丁で切り落とす。
次に腹側の蓋のような尾?をむしり取る。
次に本体から甲羅を剥がす。この手順でカニを分解します。

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写真左奥のソトゴの詰まった尾から、カニスプーンのVの字型の先で、卵を梳き落とします。卵が付いている枝状の芯が混じらないように注意します。

次に甲羅から、周囲のミソと、頭部の裏に詰まっているウチコとミソを注意深く掘り出します。
薄い膜や殻の破片が取り出した身に混じってしまうと、もう探して取り分けるのは無理になるので混じらないように注意します。

中央の本体。
胴体の中心にある赤いウチコと茶色のミソをカニスプーンで取りだし、胴体を左右二つに切り離して、次に左右の塊を今度は水平に切り割り、4つ割にします。
切れる包丁を使って切らないと、ぐちゃぐちゃに潰れてしまいます。

四つ割にした胴体から、カニスプーンのV字の先で白い身を穿り出します。
ここでも殻や灰色の肺臓などが混じらないように注意します。

写真右端の脚は、各節毎にハサミで切り離し、料理ハサミで縦に二つに割って、身を取り出します。
殻から外した身の中には、薄くて細長く、透明な筋が二本あるので、これを見落とさずに取り分けます。
これが身に混じって残っていると、食べた時に口の中で異物感があって、舌に残ることになります。

殻の破片が混じっても同じで、料理の食感や気分が台無しになるので、作業には細心の注意が必要です。
身を取り出した後の殻の写真には、この細い筋が写っているので参考にして下さい。

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一ぱいのカニを捌くには慣れていても15分はかかります。
捌くカニの数が多くなると、作業に集中力が欠けてしまうことになるので、異物が混入しないように、休憩の時間を取りながら集中力を戻して作業を進めて下さい。

こうして取り出した、タマゴとミソと白い身は、カニの体重の40%前後になります。
平均140グラムの中サイズのセイコガニの身は、およそ50グラム前後で、これがカニソースの一人前の分量になります。

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長年この作業をしていると、その年のカニの良し悪しが良く分かるようになるようです。このカニを捌く作業をして思うのは、このカニには生臭ささが無いことです。
毛ガニなどでこんな作業をしたら、お風呂に入るまで、手に付いた生臭さは取れないのに、このカニはそんなことは無く、手を拭いただけでも気になりません。
出来上がった料理の、上品なカニの香りはこの差なのかもしれません。


○次は調理です。

調理に使うのは、ガーリック・オイル、生クリーム、トマトソース、それに胡椒、塩、パプリカとバターです。

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写真左端のガーリック・オイルは、オリープオイルに薄切りのニンニクを漬けたものです。
これが無い場合は、フライパンで薄切りのニンニク片をオリーブオイルで少しコンガリ炒めてから取り出します。

真ん中は生クリームです。

右端はトマトソースです。
イタリア料理のレシピの話をしていて、良く聞かれる事があるのは、「トマトソースが無い時は?」という質問ですね。
もし和食の料理の話で、使う調味料で醤油と言われたら、「醤油が無い時は?」とは絶対に聞いたりしないですよね。
イタリア料理ではトマトソースは、日本の味噌、醤油と同じで、この質問には返事に困ってしまいますね。
今はかなりの種類のトマトソースが売られています。お気に入りのソースを買い置いて下さい。
写真の私のトマトソースは、特性のオリジナルトマトソースで、年に何度か作って、瓶詰めで常備しているものです。

○ではカニソースの調理です。
今回は一人前です。

1.フライパンにガーリック・オイルを小さじ半分、5ミリ角のバターを入れて熱します。

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2.強火でバターが溶けて泡だったら、カニの身を入れて炒めます。
写真のような塊の状態で、平たく伸ばしたり、かき混ぜたりしないで、香ばしい香りが出るまで待ちます。

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3.片面に軽い焦げ目が付いたら、ひっくり返してもう一度炒めます。

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4.両面に軽い焦げ目が付いたら、カニを鍋に移し、生クリームを75ccほど入れます。
75ccはお米の計量カップで半分弱ですね。

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5.次にトマトソースを75cc入れ、塩、胡椒、パプリカで味を調整します。
カニの卵の塊が壊れないよう、あまりかき回さないようにします。
私のトマトソースには薄く塩と胡椒の味がついているので、その分だけ塩の量を調整します。
使うパスタは10%の塩を入れて茹でるので、ソースの塩味は薄めにします。
パブリカは直接辛味を感じる程には入れません、一人前なら耳かき三杯程度の、香りの隠し味です。
味を調整して、一煮立ちして、ソースに少しトロミが出たら完成です。
この調理の時間に合わせて、スパゲッテイを茹でて下さい。
もし、手打ちのパスタで、フェットチーネが作れるのでしたら、完璧です。

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7.茹で上がったパスタに、温かいソースをかけて出来上がりです。
  チーズやパセリ、バジルなどの香草も不要で、純粋にカニの風味を楽しみましょう。

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この料理には、バゲットにガーリック・オイルを垂らして焼いた、ガーリック・トーストが欠かせません。
お皿に残ったカニのソースをこのトーストに載せたり、お皿のソースを拭ったりして食べると、とても美味しいのです。

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○ワインについて

このセイコガニのパスタはメスのカニなので、パスタ料理のクイーンの風格と品位を備えた上質の料理だと思います。
高級なワインに合うほどの料理は、なかなか家庭では作れるものではないので、このセイコガニのパスタは、ずっと置いてあった、取って置きのワインを開けるチャンスになるでしょう。
お勧めはまずシャンパンですね。シャンパンでなくても、高級なイタリアの発砲ワイン、トスカーナのフランチャコルタ・モンテニーザ・ブリュットなどもいいですね。

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私の体験で、白ワインのベストマッチは、ブルゴーニュのサシャーヌ・モンラッシュでした。

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この組み合わせは、バベットの晩餐会に呼ばれた村人のような笑顔になりますね。
濃厚な香りと味のこのパスタ料理は、シャトー物の重い赤ワインでも負けないかもしれません。試してみるのも一興でしょうか・・・・・。
(終わり)

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コメント


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どらさんおはよう。コメントありがとう。
27日のBOGGY会がチャンスなのに、駄目なのですか?
なんとか時間開けて来れればいいのですがねー。
まあいずれ機会は必ずあるのでお楽しみにね。

BOGGY | URL | 2012-12-10(Mon)10:46 [編集]


セイコがに

とても美味しそうで 私もやってみようか?と一瞬思いましたが やっぱりこれは作ってもらって食べるに限ります。
セイコがにをむしる根気はなく いつもむしゃぶりついて食べますから
カニのソースをフランスパンに塗ってトーストしたらどんな味になるかしら?
想像したらやたらと食べたくなって困りました。

どら | URL | 2012-12-09(Sun)00:55 [編集]