BOGGYのイタリア料理と山と野草

イタリアファンのBOGGYが作って食べるイタメシのプログです。 登山、ピクニックのアウトドア・イタリアンはいかがでしょう。 革工芸も始めました。

初めての革工芸 (Ⅶ)ショルダー兼用バッグ

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 革工芸というものに手を出したのは6月の半ばで、たった二ヶ月にも及ばない初心者が、バッグを作ると宣言してしまった。
8月の初めから作るバッグのことを考えるようになって、考えれば考えるほど、自分が無謀なことをしようとしているのでは?と不安を感じるようになった。



東京でバリバリの工業デザイナーとして暮らしていた頃は、自分の身の回り品には、かなりの気を使う必要があって、どうでもいいような物を着たり持ったりすれば、それだけでデザイナーのセンスを疑われてしまうという宿命的な要素があった。
その中でもバッグ類は人目に付きやすいという意味でもおろそかにできないアイテムだった。
まだペーパーレスの思想が生まれる以前では、仕事でもコピーの書類の山で、大きなアタッシェケースに、まさに大使館の書記官(アタッシェ)のように、書類を詰めて持ち歩いていた。
若い頃では到底買えないものだったValextra (ヴァレクストラ)のアタッシェケースは長く愛用した。
このメーカーは、1960年台風のデザインのアタッシェケースを数十年作り続けている。
今も色こそ違うけれど、基本のデザインは同じだ。
ネットで検索してみると、楽天のヴィンテージ・オークションに私が使っていたものと同じモデルが出品されていた。

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東京時代の持ち物で、岐阜まで持ってきたものはとても少ないのだけれど、この中には2個の革のバッグがある。
一つは、バーバリー(burberry)の黒いフォーマルユースのクラッチバッグで、これは冠婚葬祭用に使うために買ったもの。
何時頃買ったか憶えていないほど昔のもので、さすが今のバーバリーには同じバッグは無かった。(写真左)

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もう一つはバランターニ(Barantani)のクラッチバッグ(clutch bag)で、買ったのは20年ほど前、バランターニのHPに行ってみると、全く同じデザインのバッグがまだ売られている。(写真右)
この二つのバッグは私のお気に入りでとても満足しているし、まだまだ使えるので、新たにこの手のバッグを自分で作るという気にはなれない。

そしてもう一つ愛用していたバッグがあった。
同じバランターニの小型のショルダーバッグで、ネットで検索すると、バランターニのHPには無いのだけれど、使っていた物と同じ物がシドニーのハント(Hunt)という革製品のお店では売られていた。

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このソフトな感触のバッグは大好きで、仕事以外で普段に持ち歩いたせいで、クラッチバッグと同時に買ったのに、こっちが先に傷んでしまった。
それでもこのバッグの感触は今でも残っていて、今回作りたいと思ったのは、このバッグの二代目のバッグとして使いたいと思ったのだ。

今使っている布製のバッグはあまりに落差があって、これをなんとかしたいと思った。
こんな思い入れのあったバッグに、自分の作ったバッグが同列に並ぶとは到底思えないのだけれど、作ると宣言した以上はなんとか具現化してみたい。

こんな次第で、今回のバッグ作りの第一のコンセプトは、「ソフトな手触りのバッグ」になった。
革の材料はA3サイズにカットされた茶色のソフトな革三枚。革のソフトな感触はよく似ている。
ショルダーベルト用に長めのサイズの端切れ革、本体の色とは違う濃い茶色だけれど、同じ色の革は、牛半頭分のように大きなサイズ買わなければ無理だ。
本体とベルトの色の違いをデザインで処理して、うまくツートンカラーのバッグという印象のものに仕上げないといけない。

さて、ソフトなバッグと感覚的な要求は決まったものの、新しく作るバッグには何を入れてどう使うのかをハッキリしないと基本のサイズが決まらない。
それで、今の布バッグの使い勝手や不満をリストしてみた。
その用途は二つ
一つは仕事用の使い方で、昔のように大きなアタッシェケースなど不要になっている。

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入れたい物は、
1.布のバッグでは入らなかったB5版のよく使うプログラムの参考書(布のバッグでは入らない)
2.システム手帳
3.携帯用ハードディスクとUSBメモリー、拡張スロット
4.メガネ
5.買物バッグ

二つ目は、野草探索で登山ではない野原や林道を歩く時の使い方。

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入れたい物は、
1.500mlのペットボトル(布のバッグでは入らない)
2.カメラ
3.雨具
4.折り畳みカサ
5.双眼鏡、携帯電話

これらの品物が入れられる体積を計算し、かつA3の革で作るサイズの制限を加味して、バッグの基本寸法やデザインのイメージを検討した。

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デザインのラフスケッチを描いていて、既に作ったカメラケースをバッグの横に取り付けるアイデアが出た。
そして蓋付の硬い革のイメージを避けて、右端のデザインに決めた。
これを紙型用や部品のサイズ、組み上げの手順を数枚に分けて図面化する。

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本体の色とベルトの色の違いをデザイン的に考えて、本体の側面にも濃い茶色のベルトをぐるりと通してツートーンカラーのデザインイメージを持たせるようにした。

真四角のフロントポケットに変化を付けるように、地味な色違いの革をパッチワークであしらって、手作りの風味を加えることにした。
月初めから10日で、デザイン(設計)の作業はほぼ完了して、お盆休みの一週間を製作に費やすことにした。

いざ製作!

まずは一番簡単なショルダーべルトの製作から着手することにした。
これまでは比較的硬い革を使っていたのだけれど、柔らかい革を扱ってみると、根本的な違いがあることが分かった。
それは革が柔らかいと伸びるということで、決めた寸法で切るのでも、しっかりと使う側の革の部分を押さえて切らないと、刃物の抵抗が革を伸ばして切ってしまうので、切り終わると、切った革は寸法が小さくなってしまうという事。
細い幅のベルトを切って作る場合には、この注意を怠ると、ベルトの幅が細くなってしてしまう。
一箇所でも失敗すると、その1メートルは捨てることになるので、気を入れて切った。

自分で使うバッグなので、これまで使っていた布バッグのショルダーベルトの長さを参考にしてベルトの寸法を決めると、手に入れたベルト用の革では長さが足りないことが分かった。途中で繋がないといけない。
ベルトは一本、一体でこそ強度が保証できるので、これは困った。
強度を確保するには、ベルト両端を余裕をもって長く接合する必要があるのでこれは目立つ。
散々考えて、実際に接合の実験をして、この接合部分を隠す処置として、ベルトのスリップ止めの部品(写真下)の代わりに、編み込みを入れてスリップ止めの効果と、接合部分を隠すことにした。

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結果は上々で、他には無いシャレたスリップ止めのデザインになった。

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ただしこの場合は、ベルトの長さを調節するには、両端を均等に調節する必要があって、調節用の金具(コキカン)を二つ付けた。
過去の経験からショルダーベルトは一度調節すると、ほとんどそれを固定的に使うので、二箇所の調節箇所の不便さは問題にならないと思う。

ベルトの問題が落着して、次に簡単な作業は、本体側面にショルダーベルトと同じ革をベルトと同じ幅でカットして縫い付ける作業だ。
末端は本体の縫込み段階で、最終的に左右から回ってくる側面の調整をするので寸法に余裕をもって長くしてある。

糸で縫う場合も、柔らかい革は難しい。
縫い糸の締め具合で革を縮めて縫ってしまって、仕上がりの寸法が短くなったりする。
裏で縫ったものも縫いが緩ければ、表に縫い糸が見えてしまって失敗する。
これまで硬い革では経験しなかった色々の難題を抱えてしまった。
初心者なら当然の未経験の領域なのだと納得して、一つ一つ解決しながら進めるだけだと思った。

次はフロントのポケット部分、パッチワーク作りにかかる。
これまで買ってあった革の端切れから、パッチワークに使う革を選ぶのだけれど、それほど沢山の端切れを持っている訳でもないので、選択は限られる。
あまり派手な色の組み合わせでは、パッチワークだけが目立ってしまうので、おとなしい色違いにした。赤い革がちょっと一枚だけ目立つけれど、これはご愛嬌で、これでこの部分がパッチワークであることが分かる。

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しかし、革の厚さも微妙に違い、、硬さも微妙に違う4枚の革を縫い付けると、仕上がりはきれいな四角形にはならなかった。
これにファスナーを縫い込んだ側面を縫い付けるのはどうすればいいか、ちゃんと四角い立体になるかどうか分からない。
考えても分からないので、ただひたすら縫うしか方法がない。
もし寸法に狂いが出て、歪が出る場合、目立ちにくい底の部分に寄せるようにしようと、縫い初めは、上部の中心部から左右に分けて縫い進め、最後に底の部分で狂いを調整する考え方で、全てこの手順で縫いを進めることにした。

こんな作業を続けていると、一日が早くて、直ぐに夕方になってしまう。
小さな縫い目に目を凝らすので目はショボショボ。
同じ姿勢を続けるので、肩も凝るし、軽い頭痛もする。
その時、あっこれはヤバイ!と思った。

実は私には以前から"頚腕症候群"という首と腕に関わる持病があって、常々仕事のコンピュータのプログラムを作る作業姿勢がその原因だと言われていた。
ある日突然、首が下を向いた状態で動かせなくなり、無理に顔を上げようと首を動かすと、腕に焼いた火箸を突き刺すような激痛が走る。
つまりただ歩くことさえも難しくなって、即入院となり、副作用が色々言われている副腎皮質ホルモンを投与されることになる。
東京時代には二週間も入院させられた。
その後入院には至らないものの、仕事が不都合になる症状が何度か繰り返して、リハビリの通院に時間を取られることになった。

岐阜に来てから、またこの症状が出た時には、整形科の先生から、コンピュータ(プログラム作成業務のみ)の仕事は3時間以上続けてはいけないこと。
3時間を超えたら、一端椅子を立って、軽い運動をしたり、外を散歩して、首と背筋の筋肉を休めなさいと言われた。
そしてそのプログラムの仕事は一日に6時間程度に制限しなさいとも言われた。
登山の趣味は、この整形科のドクターの勧め、というよりも半ば強制的だったと私は思うのだけれど、今ではこのことをとても感謝している。

話を戻すと、この革工芸の作業は、私にとっては禁断のコンピュータの作業姿勢と同じだと気が付いた。
こんな作業を朝から晩まで続けていると、必ず持病が再発する危険を背負うことになる。「あの激痛は二度と味わいたくない」と思ったら、楽しい革工芸だけれど、コンピュータの仕事と同じに、作業時間の制限をしないといけないと思った。

お盆休みは残す所5日、作業時間を午前と午後の二部に分けて、一回3時間の作業として、1日6時間に制限することにした。
ほぼ部品化の終わった状態で、今後は縫い上げの作業だけとなる。
出来上がった部品を展開するとこんな状態だ。

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残された作業は、前後の面と、側面四周との縫い合わせで、一日も早く仕上げたい心境なのだけれど、ここは我慢をしなければいけないので、残り5日間に均等に作業時間を配分した。
革工芸はとても楽しい趣味と思って嬉しかったのだが、私の健康管理の上では問題があることが分かったので、登山などとは違って、残念ながらあまりのめり込むのは良くないと分かった。

少し予定より遅れたものの、休みの最終日にバッグは完成した。
仕上がり上での不具合点を探れば、それは沢山あるのだけれど、初心者にしては上出来と、とにかく出来上がったことに感動した。
大好きだったバランターニのショルダーバッグのソフトな感触だけは蘇ったことが嬉しかった。
深夜にアメリカと決勝戦を戦って、惜しくも銀メダルになったなでしこジャパンに拍手を送ったように、この夜は出来上がったバッグと作り上げた自分に惜しみなく拍手を贈る気になった。

ここまで来るのに、指に何度針を刺して痛い思いをしたかは数えてはいないけれど、刺し傷から血は出るものの、ティシュをあてがって指を暫く圧迫していると、不思議に出血は嘘のように止まる。
痛みは少し残るものの、バンドエイドの必要もないのだ。
もし切り傷のように手当が必要だったら、何時も決まって刺す左手の人差し指はバンドエイドだらけになっていたかもしれない。

今回のバッグのデザインには、オリジナルのアイデアが幾つかあって、先に説明したベルトのスリップ止めもそうだけれど、三箇所のファスナーの扱いも工夫した。
通常のファスナーの扱いは、下の見本のようにファスナーの金具の通り道は切り開いて、ファスナー全体が見えるようになっている。

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私はこの部分の革は切れ目を入れるだけにして、ファスナーの金具が止まる両端は、革を切り取った。
こうすると、ファスナー全体がほぼ隠されて、見栄えがよく見えるのでは?と実験してみた。
ファスナーの金具が両側の革を食い込んでしまって動かなくなる心配もあったのだけれど、革の厚さの具合からか、全く問題もなく、革の切り口も処理しないでソフトなままにしたので、指に当たる感触もソフトなままで問題がなかった。

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いずれ切り口の端がめくれてくることもあると思うけれど、それでファスナーが見えるようになってもそれはそれで構わない。

バッグ背面のファスナーは長手方向に縦に切り、薄い手帳やパンフレットなどが出し入れし易いようにした。

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ショルダーベルトを使わない時の把手は、持ち上げれば10円玉のサイズの隙間ができて持ちやすく、使わない時は平たく寝ている形式にした。
布製のバッグは指が三本しかかからない把手だったので、長く持っていると指が痛くなった。今度は五本の指で持つ事ができる。

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バッグの本体部分を覗いてみると、黒いHello Kittyと印刷された袋が見える。
バッグ本体の収納部分は、仕事と野草探索の異なった二つの使い方が出来るように、中仕切りを入れない、フリーな入れ方をしたい。

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このHello Kittyの袋は百均ショップで買った化繊の簡易物入れで、幅を短く、ほぼ四角形に作り直したもの。
三段のファスナーで小物が入れられる。
これをマジックテープで本体の中壁に取り付けられるようにした。

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これを使わない時は袋ごと取り外せばいいし、そのままそっくりフロントのポケットに入れ換えることもできる。
フロントのポケットには、内壁にキャッシュカードや切符のようなものを差し込む切り欠きがあるだけで、基本的には中仕切りはない。

最後は両サイドに、以前作ったデジカメ・携帯両用ケースが取り付けられる。
こんなことは手作りならではのバッグで、ここに取り付けられる双眼鏡のケースも欲しくなった。

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バッグの赤い革の角にこんな小さなエンブレムを付けてみようかと、ピンの先でBの字を加工してみた。決心が付かずにまだ取り付けていない。

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こうして念願のバッグも、初心者の無謀な挑戦による失敗の危険をはらみながらもなんとか完成した。
先に作ったデジカメ・携帯両用ケースが、最初の作品と改定版の作品ではかなりの出来具合に差が出ていたと思う。
もう一度、反省点をリストしたり、このバッグを解体して、部品の寸法を取り直し、設計に改良を加えれば、より高い仕上がり品質のレベルは高くなるだろうとは思う。
しかし、完成までの労力の積み重ねを思うと、同じものを二度も作る気にもなれないし、既にこのバッグに愛着も感じているので、分解などという残酷なことなどとても出来そうにもないのが本心で、このままずっとこのバッグを愛用しようと思う。
(終)

次の作品を皆さんにお目にかけるまでは、かなり時間が開きそうな予感もしています。
それだけこのバッグに精力を傾けたせいでしょうか。
これからは健康の面も考えながら、この革工芸に付き合って行こうと思います。
長々と、このバッグの作成過程にお付き合い頂いたみなさんに感謝をしたいと思います。

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コメント


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ケーキさんおはよう。
今日は山で会えますね。
このバッグ持ってゆきますから見て下さいね。

BOGGY | URL | 2012-08-23(Thu)06:09 [編集]


pamuさんおはよう。
日記拝見しました。
造形作家、つまりアーティストですよね。
私は美大の出ですが、自分がアートの世界に居たことはないと思っているのです。
自分は技術屋だと思っているので、アーティストは私の憧れなのです。
つまりは感性の問題で、理屈、理論ではない感覚的造形の能力が私の弱点だと認識していました。
pamuさんはそれをお持ちとお見受けしました。
素晴らしいです。

BOGGY | URL | 2012-08-23(Thu)06:06 [編集]


完成、おめでとうございます。

わぁ、、ついにカバンまで作られたのですね。おめでとうございます。

読ませていただいてるだけで、私まで力がはいり、手に汗をにぎりました。

何もしていませんが、私までなぜか達成感いっぱいです。

短い間にここまで到達されるとは、、感服です。

ケーキ | URL | 2012-08-22(Wed)19:45 [編集]


すごい

きちんと細部まで考えて図面まで引いてるんですね~
私は財布以上大きいものは作ったことがありませんが。。。
それでも「あれ?」ってことは何回もあるのに。。。カバンなんて
きっと出来上がる前に「革の無駄遣い」になるのがオチです。
いやはや 凄いです。

pamu | URL | 2012-08-21(Tue)22:09 [編集]